年収の壁に配慮した配偶者手当の見直しを国が推奨しています。しかし、どのように対応するかは企業の選択の幅が広いです。

2024/04/16|1,014文字

 

<国が配偶者手当の見直しを企業に求める理由>

夫の会社の配偶者手当をもらうため、他社で働いている妻が、収入基準を超えないように働き控えをすることがあります。このことから、社会保険の制度による「年収の壁」の他に、夫の会社の配偶者手当もまた「年収の壁」の原因となり、就業調整のもととなっています。

配偶者手当を見直すことによって、「年収の壁」を一つ解消することになり、企業の人材確保に役立つというのが国の考えです。

そして、配偶者手当を縮小・減額・廃止することによって得られる原資を元に、独身者や能力開発に積極的な人が活躍できる賃金・人事制度を改めて考えてはどうかと提言しています。

 

<賃金制度の見直しの手順>

 

  • STEP1賃金制度・人事制度の見直し検討に着手

配偶者手当を支給する企業は、減少傾向にあります。他社事例を参考に、自社の案を検討します。

 

  • STEP2従業員のニーズを踏まえた案への絞り込み

アンケートや聞き取り調査を行い、自社に適合した案に絞り込んでいきます。このとき、特定の属性に偏らないよう、独身者・既婚者、お子さんの数、年代などのバランスを考えて行います。

 

  • STEP3見直し案の決定

労使での話し合いに十分な時間をかけ、回数を重ねます。一方で、賃金原資総額が維持できることを確認します。

配偶者手当の縮小・減額・廃止によって、大きく収入減となる従業員については、激変緩和措置として、調整給などの必要な経過措置を設けます。

 

  • STEP4新制度の丁寧な説明

これまで配偶者手当を受給してきた従業員の他、配偶者手当の受給を期待していた従業員も利害関係が強いといえます。

見直しの影響を強く受ける従業員を中心に、丁寧な説明を行い、社内での理解が得られるようにしましょう。

 

<もう一つの考え方>

ここまでは、配偶者手当の縮小・減額・廃止を行う一方で、基本給の増額、子ども手当の増額、資格手当の創設・拡充などを行う想定で説明しました。

しかし、「年収の壁」を取り払うという目的からすると、配偶者手当の収入制限の撤廃という方法も考えられます。つまり、配偶者の収入にかかわらず、配偶者手当を支給するという方法です。この場合、賃金原資総額が増えることになります。

これをも選択肢に加え、上記STEP2の聞き取り調査を踏まえて、判断していただけたらと思います。

 

※参考資料:厚生労働省「配偶者手当を見直して若い人材の確保や能力開発に取り組みませんか?いわゆる「年収の壁」対策」

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